基地問題と女性の人権

 アメリカ兵からレイプを受けたサバイバーのお話を大阪外国語大学で聴く機会がありました。これは「アジア現代女性史研究会(代表藤目ゆき)」や女性学との共催で、「基地問題と女性の人権-沖縄からの発言-」と題した公開講演会でした。学生以外にも門戸が開かれていたので、聴講させていただいたものです。
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 1984年、当時17歳だった富田由実(仮名)さんは、学校帰りにアメリカ兵から「I can kill you」とナイフをつきつけられ、公園で3人のアメリカ兵から屈辱的な暴行を受けました。「殺すぞ」ではなく「殺せるぞ」と彼らは言ったのです。ものすごい恐怖を受けて、解放された後も何度も彼女は自殺未遂を繰り返しました。不眠症や自立神経失調症に苦しみながら、でも警察に訴えることはしませんでした。訴えることにってさらに受ける二次被害と社会からの偏見を恐れたからです。暴行を受けたのは自分が悪かったのではないかと自分自身を責めたり、自暴自棄になったり、フラッシュバックに襲われたり、本土と沖縄を行ったり来たりと苦しい生活を続けていました。
ところが、1995年9月、またもや沖縄で小学生の少女への暴行事件が起こりました。富田さんはこの事件を知り、自分が被害を受けた時よりも嘆き悲しみ、苦しみました。そして今まで何も行動を起こしてこなかった自分自身を又もや責め続けました。そしてこれ以上、被害者を出さないためにと、反戦運動に関わるようになりました。
沖縄は「基地に対する被害者」という側面を持っているけれど、一方で、基地があるということで、アメリカが今まで起こしてきた戦争を担わされた加害者でもある。だからこそ、自分たちの責任を痛感し、反省の意味を込めて沖縄から自衛隊を含めた基地を無くして本当の「平和の発信地」にすることが大切だ、とのメッセージを私たちに届けてくれました。

改正雇用均等法が成立

6月15日(木)に「改正男女雇用機会均等法」が衆院本会議で可決、成立しました。来年4月施行です。
改正のポイントの一つに、セクシュアル・ハラスメント防止策が「企業の配慮義務」から「企業が措置をとる義務」へと強化されました。また女性に限ってきた性差別を「男性でも禁じる」ことにより、男性へのセクハラ防止も義務付けられることになります。この「男性へのセクハラ」というのは、一見わかりにくいようですが、実は窓口での相談も最近増えてきています。男性から男性への性的なからかいや嫌がらせという問題が顕在化してきています。

もう一つの大きなポイントは「間接差別の禁止」です。一見性別とかかわりなく見える基準が、結果的に一方の性に不利益になるものです。改正法では三つ(①募集・採用時の身長・体重・体力要件②総合職採用時の全国転勤要件③昇進時の転勤経験要件)の禁止を挙げる「限定列挙」方式をとっていますが、これに関しては、「三つ以外は問題なしとされる恐れがある」ということで、多くの市民が国会でのロビーイングなど、随分と色々な運動や申し入れなどをしてきました。その結果、不十分ながらも附帯決議で「他の差別も司法判断で違法となりうることを周知する」「施行後5年を待たず、(法律の)見直しを図る」ことが盛り込まれました。
何とかこの法律を足がかりに差別是正を実効あるものにしていきたいと切に願います。

博士の愛した数式

遅ればせながら小川洋子の『博士の愛した数式』(2003年)を読みました。
学生の頃から数学は大の苦手だっただけに「数字と向き合う」なんてことは全くなく、ましてや数字を「美しい」と感じたことなんてあるはずもなく、という人生でしたが、もしかしたら随分ともったいないことをしていたのかも、と思ったりしました。
その時その時に、自分にとって大切な人との心からの触れ合いが、記憶が80分しかないということさえも乗り越えさせてくれるのだと感じる、とても心暖まるストーリーでした。
ただ、映画化されてから読んだので、博士がどうしても寺尾聡の博士しか頭に思い描けず、自分なりの博士像を作れなかったのが、ちょっと残念ではありましたが。
でももうすぐDVDも発売されるし、ぜひ映画も見てみようと思います。

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均等月間と間接差別

6月は「男女雇用機会均等月間」です。これは1985年6月1日に男女雇用機会均等法が公布されたのを機に制定されたもので、今年で21回目を迎えます。その間、1999年の改正では、「セクシュアル・ハラスメント防止は事業主の雇用管理上の配慮義務」と定められました。
今まさに国会ではこの均等法の改定について議論されています。その焦点のひとつが「間接差別の禁止」です。「間接差別」とは、形式的には、性に中立であっても、運用した結果一方の性に不利となる制度や規定のことです。予定では15日(木)に衆議院での採決を迎えますが、審議の行方をしっかりと見ていきたいと思います。