上司からパワハラを受けた腹いせに部下にパワハラ

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「親の介護をするなら仕事を辞めろ」「拒否したら『バカ』『デブ』と仕事中に大声で言われるようになった」などのパワハラを上司から受けた職員が約1割にのぼる、という調査結果が出ました。周囲で見聞きした職員を含めると3割に。これは仙台市職員労働組合のパワハラ調査の結果です。4月19日に読売新聞(宮城県内版)で報道されました。
アンケート結果を詳細に見てみると驚くような言動が列記されています。「サービス残業を強要された」「高卒だからとバカにされた」「長時間立たされたまま皆の前で大声で叱責された」「わざと聞こえるような一人言で『君は能なしだからな』と言われた」など。
特に注目するのは、自分が直接パワハラを受けていなくても、周囲の人が受けている言動によって、同様に精神的苦痛を感じていることです。例えば「上司が他の職員を大声で怒鳴っていた。怖くて足が震え、逃げだしたくなった」「職員の誹謗中傷を大声で話していた。そのような話を聞かされると、自分も仕事にならない状況だった」など。
まさにパワハラを受けている当事者だけでなく、周囲の人たちの労働環境を悪くしている、ということが実態としてはっきりと浮き彫りになりました。
パワハラに関して、もう一つ非常に興味深い調査があります。中部地方のある県庁が全職員を対象に昨年3月に行ったアンケートです。そこには「パワハラを受けたことがありますか」という項目と同時に「パワハラをしたことがありますか」という項目が調査されています。124人(8%)の人が「パワハラをしたことがある」と答えているのです。
「どのようなパワハラをしましたか(複数回答)」には「叱責をくり返す-35人」「無視し続ける-18人」「ミスの注意に加え、人格まで否定する-11人」「他の職員と差別をする-8人」「仕事を与えない-7人」などが上がっています。
そしてさらに興味深いのが、「パワハラをしたことがある」と答た人へ、「どんなときにパワハラをしたのですか(複数回答)」という設問には「部下の仕事ぶりが悪いとき(69人)」「部下の勤務態度が悪いとき(35人)」に続いて「自分自身がイライラしていたとき(29人)」「部下と性格が合わないとき(16人)」と続き、人数が少ないながらも「自分も上司からパワハラを受けた腹いせ(八当たり)(2人)」「仕事が忙しかったとき」と回答しています。
アトリエエムのパワハラセミナーでもお伝えしていますが、まさに、「行為者個人の資質、問題」ではなく「組織の問題」である、そして「ハラスメントの連鎖」が調査でも明らかになっています。
「当社では、セクハラもパワハラも相談がありません」と事業所の人事担当者の方はよく言われます。が、「相談がない」ということは、「実際にハラスメントが発生していない」ということでは、決してないのです。
中部地方の県庁の調査でもハラスメントを受けて、誰かに相談したのは約半分、しかもそのうち専門の相談機関への相談は一番人数が少ないのです。
皆さんの事業所でも「ハラスメントの意識・実態調査」をされることをお勧めします。アトリエエムでは、「ハラスメントの調査・研究事業」も行っています。ぜひご相談ください。

各自治体で積極的な取り組みを

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アトリエエムでは、2005年秋からパワー・ハラスメント予防セミナーを継続して実施してきました。民間企業、行政機関、教育機関等から依頼を受け、人材研修を年間約120回ほど行っています。その研修を通じて実感としてずっと感じていたことが、まさに「法整備」でした。
企業、自治体を問わず「法律」がないから積極的に取り組めない、あるいは、パワー・ハラスメントをどう定義してよいかわからない、と多くの方が戸惑っている、ということに気づきました。国による「法整備」はもちろんのことですが、自治体における取り組みももっと進める必要がある、との思いから今回議員の方を対象とした「自治体政策特別セミナー 政治的課題としてのハラスメント防止対策 理論、判例研究、実践まで」を実施しました。
セミナー当日は、近畿内の市議会議員さんだけでなく、福井県や香川県からもご参加くださいました。三木からは「パワー・ハラスメントの現状と判例研究」「精神障害等の労災認定の現状と経緯」「ハラスメントの防止対策」「各自治体の防止規程(ガイドライン)と通達」「海外の法整備」等について、ご説明しました。その後、兵庫県小野市職員の中村和子さんから「いじめ等防止条例」の解説、兵庫県西宮市議の四津谷薫さんから議会での質問の経緯をご報告いただきました。
これら一連の講義によって、参加の議員の方たちには、ご自分たちの自治体での現状、さらには防止対策として、どのような取り組みが必要なのか、ということを具体的に考えていただくことができました。特に自治体での制度は予算措置も必要であり、一朝一夕には変わらない事が多いのが現状ではありますが、より具体的な取り組み方法に気づいていただけたことは、大きな成果でした。
例えば、「庁内での意識・実態調査をする」「相談窓口を設置する」「相談窓口担当者の研修をする」「職員の研修をする」「防止規程(ガイドライン)を制定する」「条例を制定する」「職場のハラスメントだけでなく、子どものいじめも視野にいれた包括的な取り組みをすすめる」などです。
その後、グループワークで、情報交換をしつつ、自分自身が何をどう取り組んでいけばよいのか、といった短期・長期的な目標・課題を把握することができたことは本当に大きな成果でした。参加された議員の方たちにとって、すぐに政策提案ができる実効的なセミナーになったと思います。
アトリエエムでは、今後も理論のみならず、ハラスメント防止に向けた具体的で実効的な取り組みが広がっていくような事業を進めていきたいと思います。
四津谷薫議員(兵庫県西宮市)のブログはこちら>>
植田真紀議員(香川県高松市)のブログはこちら>>

厚生労働省が通達

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4月6日に厚生労働省が各都道府県の労働局長宛に通達を出しました。
3月24日のブログでもお伝えをした「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の一部改正についてです。
厚生労働省のHPはこちら>>

12項目を新たに追加、現行の7項目について心理的負荷の強度を修正しています。
「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」を新規に追加、強度を3としています。まさしくこれがパワー・ハラスメントに当たります。
このように一定の評価ができる項目はあるものの、残念ながら見直しが据え置かれたものもあります。

それが「セクシュアルハラスメントを受けた」のが2というものです。
パワー・ハラスメント同様、セクシュアルハラスメントも深刻な人権侵害であり、決して見過ごされるべきものではありません。
2007年に男女雇用機会均等法が改正されたとはいえ、あちこちの事業所で今なおセクハラが起こっています。
被害者の多くが重いPTSDに悩んだり、うつ病などの精神障害等になったり、退職せざるを得ないような状況に追い込まれています。
今回の見直しでは、この項目も実態に即して、3という強度にするべきにも関わらず、据え置かれてしまいました。
セクハラ行為と被害の深刻さが社会ではまだ十分に認識されていない、というのが現状なのです。

特にセクシュアルハラスメントの場合は、被害者が上司や相談窓口に相談をしたことによって、その後より酷いパワー・ハラスメントを受ける、ということがまだまだ多く見受けられます。
相談担当者からの二次被害、上司を始め周囲の人たちからの無視や嫌がらせ、そして被害者の雇用契約を打ち切ったり、自ら退職するように仕向けるなど。
それが訴訟などになることも多いのです。

パワハラもセクハラももちろん、起こさない、起こさせないのが一番大切ですが、万一発生した場合、その後の組織の対応が大きく問われます。
相談窓口を設置するだけでなく、相談担当者のきちんとした研修が非常に大切になるのです。

アトリエエムでは、10月に大阪市内で「ハラスメント相談窓口担当者」を対象としたセミナーを実施します。
詳細はお問い合わせください。

政治的課題としてのハラスメント防止セミナー

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桜の便りと共に新年度がスタートしました。
アトリエエムが昨年製作したDVD『パワー・ハラスメント そのときあなたは・・・』は120枚以上をご購入いただきました。
(DVDの詳細はこちらをご覧ください>>)
また、ハラスメントのセミナー(人材研修)も2008年度中に、約120回実施させていただきました。

DVDのご購入先は、図書館、男女共同参画センター、人権センター、自治体、そして民間企業と多岐にわたっています。
企業の業種も製造業、サービス業など様々です。また、各支店で活用するため、複数枚ご購入いただいた企業もありました。

セミナー(人材研修)も同様に様々な業種や規模の事業所からお申し込みをいただきました。
まさしく今、ハラスメント対策は社会的な問題であり、事業所にとっても喫緊に取り組むべき課題であることを痛感した1年でした。

折しもパワー・ハラスメント防止指針(通達も含む)が岩手県、富山県、兵庫県、和歌山県、大分県、熊本県、佐賀県の7つの県で制定され、厚生労働省も労災認定の基準となる「職場における心理的負荷評価表」を4月から修正します。
少しずつではありますが、パワー・ハラスメントの防止対策を講ずる機関が増えてきています。
今後はさらに、国や自治体において、法律や条例の整備が求められるところです。

そのような状況を鑑みて、アトリエエムでは、政治的課題としてのハラスメント防止の取り組みを考えるセミナーを4月14日に実施いたします。
(詳細はこちらをご覧ください>>)

その後も、6月には福岡県でのセミナー、10月には相談窓口担当者を対象としたセミナーなど、ハラスメント防止に向けてのより実効的なセミナーを実施していきます。
当社のセミナーを皆様の事業所のハラスメント防止対策にぜひともお役立ていただければと思います。

さらに、4月から当社にも新しいスタッフが加わります。今まで以上により迅速に皆様に情報をお伝えしていく体制をつくっていきたいと思います。

今年度も引き続き皆様のご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申しあげます。