アメリカの辞書出版社メリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)が選んだ今年の言葉は、「they」という代名詞でした。英語を話すときに、出生時の性別に関係なく自認する性別を表す代名詞を選ぶ権利を行使する人が増えていて、「she」や「he」の代わりに「they」などが使われています。複数形だけではなく単数形でも使いますが、動詞はareなど複数形のままです。
一方日本では、トランスジェンダーの女性が、女性として生き、女性トイレの自由な使用を求めて、職場の経済産業省を訴えていた裁判の判決が12月12日にありました。
東京地裁は「日本でも、トランスジェンダーがトイレ利用で大きな困難を抱えており、働きやすい職場環境を整えることの重要性が強く意識されている」「国民の意識や社会の変化に照らせば、自ら認識する性別に即して生活する重要な法的利益の制約は正当化できない」として、国に132万円の賠償を命じました。
経産省側が、トイレを自由に使うためには性同一性障害であると他の女性職員に説明することが条件だとした(カミングアウトを強制した)ことは、「裁量権の濫用であり、違法」との判断を示しました。
さらに原告の上司から「もう男に戻ってはどうか」などと言われたことについても「性自認を正面から否定するもので、法的に許される限度を超えている」として違法だとの判決を下しました。
原告の女性は男性として生まれましたが、健康上の理由で性別適合手術を受けておらず、そのため戸籍は男性となっています。しかし女性は性同一性障害との診断を受け、女性ホルモンを投与して女性として生活しています。
原告の女性は、判決後の記者会見で「トランスジェンダーにもさまざまな人がいる。大切なのは人権を重視した対応。他の女性と同じように扱ってほしい」「多くの職場で(改善に向け)前向きに取り組んでほしいです」と語りました。
原告側弁護団の山下敏雅弁護士によると、性的マイノリティの職場環境改善をめぐって下された初の司法判断だそうです。
経産省には、速やかに職場環境の改善に努めてほしいと思います。
その後、原告、被告の双方が控訴しました。
原告の女性は、トイレの使用制限だけでなく、性別適合手術を受けるまで異動がなかったり、他の女性職員と同じ時間に健康診断を受けられなかったりと違法な処遇があったと訴えていましたが、認められなかったためです。